Ⅳ 手掛かり─ⅹⅹ
「やー、レフレヴィー長官さすが、優しい美人大好き~」
受け取ったタオルで濡れた体を拭き始めたところで、ガゼルとバララト、アクセルにシン、ツイードにカイザルが、クレイセスとクロシェに従い次々に入って来た。
「それで? ニットリンデンから帰って来たというのは本当か」
へらへらするデュエルに対し、サンドラのいらつきを汲んだように、シンが鋭い目つきをさらに尖らせて訊く。しかしデュエルは物怖じした様子もなく、「え、あんたホントに真っ当な騎士? その筋の人とかじゃなくて?」と正面から切り込んだ。
サクラはうわー、勇気あるなあ、とデュエルを見る。彼を取り巻く騎士たちの雰囲気は殺伐としたものだ。本人は一向に気にする様子もないが、この空気感にサクラが耐えられず、話を進めようとデュエルを促した。
「デュエルさん、そこに掛けてください。みんなも適当に座ってもらえますか。彼の話が本当なら、わたしたちに不利益はないはずです」
サクラの幕舎は一番大きい上に基本的にはひとり、ときどきサンドラと二人で使用する程度だ。そのため共有部分も大きく、軍議などもここで行っている。今入ってきた面々は、軍議のときの必須メンバーだ。クレイセスはデュエルが本当にニットリンデンから戻って来たのなら、その情報は即座に共有すべきと判断し、召集をかけたに違いなかった。
サクラの言葉に騎士たちは黙って従い、銘々が腰掛ける。
サクラの言葉ひとつに従うその様子に感心したように、デュエルはサクラが指示した場所に座り、次の質問を待つようににまっと笑った。
「ニットリンデンで見たことを、教えてください」
場が整ったのを見てそう言えば、タオルを首にかけ、デュエルはそれまでの表情を一変させ、引き締まった顔と低めた声音で語りはじめた。




