表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/218

Ⅳ 手掛かり─ⅹⅷ

「わたしの剣もね、騎士が普通に使っている物に比べれば軽いのです。クロシェほど軽くすれば速さは得られるでしょうが、どう言えば良いのかな、わたしは軽すぎると芯を定めて繰り出すことが難しかった。自分に合う一本というのを決めるのも、なかなか大変なんですよ。リクバルドは、まだそういう時期だったんです」


 サンドラの説明に、サクラはリクバルドの笑顔を思い出す。長官たちについて説明をくれたときの、得意げな表情も。

「何もかも……これから、だったんですね。リクは」

 頷いたサンドラに、()んでしまった未来を思う。


 しんみりしてしまった空気を察したように、隅で伏せていたイリューザーが立ち上がり、ゆったりと近付いてくると鼻先でサクラの肘を跳ね上げた。そうして目の前に座り、顎を上げて鬣を差し出す。


「サクラ様、イリューザーのこれは?」

 クロシェの問いに、サクラは思わず笑顔になって答えた。

「撫でて元気を出すがいい、のポーズですかね。イリューザーのここの毛だけ、ほかのとこよりずいぶんやわらかくて、めちゃめちゃ気持ちいいんです」


 言って、サクラは差し出された顎下から胸元にかけての毛を指で梳く。ここの毛はほかよりもボリュームがあってふわんふわんしているのだ。その気持ち良さにときどき発作を起こして顔をうずめれば、二人だけのときなどは「さあ来い」とばかりに仰向けになってくれる。


「おっさんが見たら泣きそうです」

 クロシェが笑い、クレイセスも「確かに」と頷いて言った。

「しかもオルゴンがこれほど人の心の機微に敏いなど、思ってもみませんでした」


 イリューザーが標準になってしまったサクラとしては、オルゴンのそもそもはよくわからない。だが話として獰猛(どうもう)だとか孤高だとか聞かされた印象とは、大きくかけ離れているなあとは思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ