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Ⅳ 手掛かり─ⅹⅳ

 見た目で判断してはならないと思いつつも、細かいことは苦手そうと思っていた。気迫とかで相手を倒していそう、と埒もないことを思ったことをこっそり反省する。やはり彼は、実力をもってして団長だったのだ。


 ちなみにサクラの成績は利き腕で八割程度。ただ的に当てるというだけなら外すことはなかった。誰かを助けるためというより、自衛のために身に付けていることなので、命中率に関して厳しくは言われない。ただ長官たちが揃って言うことは、「あとはためらわないことです」の一言だ。ガゼルが困ったような表情で、「サクラ様は相手がどんな悪人でも、自分が痛みを与えることには躊躇しそうだ」と言った。あのとき自信を持って反論できなかったのは、「痛そう」と思うことに躊躇する己が、やはりどこかにいるからだろう。


「サクラ様が逃げられなければ、助けるために騎士が痛手を負う。それを覚えていてください。……あのときのクレイセスのように」

「……はい」

 サクラの心の内を見て取ったように、サンドラがそう言った。

 何が大切かを、見誤ってはいけない。

 目の前の単純な情に流されるようなことは、慎まなくては。


 心の弱さも、頭の弱さも、サクラを、ひいては「セルシア」を狙う者にとっては隙になる。

 そうありたくないとやり始めたことだ。成長したい。


「雨が上がったら、剣術は少し、我々以外との手合わせをしてみましょうか。まずは一対一から。少しずつ複数を相手にする戦い方もしていきましょう。サクラ様は筋は悪くありません。だからこそ、勝とうとしないでください」

「勝とうとしない?」

 合わせていた木剣を下げ、サンドラは頷いた。


「サクラ様が何よりなさらなくてはならないことは、生き抜くために逃げることです。逃げるための時間が稼げればいい。サクラ様に学んで欲しいのは、どんな状況や相手からでも、逃げる方法です。あなたを失えば、我々はおしまいなんですから。逃げて、生きていてさえくださったなら、必ず助けに参ります。剣術も体術も、そのための手段です」


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