Ⅳ 手掛かり─ⅹⅲ
魂は、三世界のどこかに還るのだという。
それなら、ユリウスはどこに還りたいと願うのだろうか。苦しみの多かったレア・ミネルウァにではないような気もする。
世界に「馴染む」ということを、わかりやすく教えてくれたのは彼だった。刺客から逃がそうとして伸ばされた腕も、雪に飛沫いた鮮血の色も、視えてしまった過去も、憎々しげにサクラを見た目つきも、鮮やかに思い起こせる。
一番最後に彼と交わした言葉も、そのときの、穏やかな眼差しも。
その希望は、叶えられなくなってしまった。
仲違いしたままにならなかったことが、せめてもの救いだ。
「きっと、届いていると思います」
歌い終えたタイミングでそう言われ、サクラはそうであればいいと、王都の方角の夜空を見つめた。
*◇*◇*◇*
それから二日。
雨に包まれた村は、毎日の復興の手を止め、ようやくゆっくり出来るといった雰囲気に包まれていた。
サクラは幕舎の中でも、サンドラに体術を教わっている。外に出られないときは、手離の打ち方も。手離は形状は違えどダーツのようなものだが、彼らは狙ったところに対する命中率がすごい。その辺の草を寄せ集めて作った簡易な人型に、手本として投げて見せてくれたどれも、一発で急所に当てて見せた。これに関しては近衛も護衛騎士として選任される場合、九割以上の命中率がなくてはならないという。
「ちょっと、失礼なこと聞いてもいいですか?」
「なんでしょう」
「てことは、シェダルさんも命中率九割以上の腕前なんですか?」
サンドラが笑い、「そうですよ」と答える。
「シェダルさん、剣とか槍とか、武器が大きい物は得意そうだなあと思ったんですけど、小さいのもイケるんですね……」
「シェダル殿はあれで器用なのですよ。右手は失われましたが、彼は左手も右と同じように使えます。わたしも利き腕は九割以上ですが、そうでなければ七割です。シェダル殿は、左腕でもほぼ十割なんですよ」
「すごい……」




