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Ⅳ 手掛かり─ⅷ

 けれど実際にそう振る舞うヤツを見て、格好良いなどと思えなかった。

 少なくともサンドラには、「諦観(ていかん)」を盾に縮こまっているだけの、臆病な姿に見えたのだ。


 その点、サクラは自分を諦めているのに、他者を助けることに躊躇がない。その不均衡さが、そもそもサクラに内包されている強さが足掻いている証拠のようにも見えた。


「クレイセスとクロシェはね、お気持ちが本当に動くまで放っておいて良いのです。まずはサクラ様。わたしたちが慕うご自分のことを、ちゃんと認めてください。『セルシア』だから慕っているのではないことはもう、受け止めてお出ででしょう?」


 サクラはもう、わかっているのだ。

 クロシェもクレイセスも、「セルシア」という職業を愛した訳でないことを。

 近衛騎士たちが誓ったのは「サクラ」という「セルシア」であることを。

 子供たちが慕う気持ちを。


 ただそれを、そのように受け止めて良いのかどうか、戸惑っている。


「わたしはわたしの主君のことを、誰よりサクラ様、あなたに認めて欲しい」

 目許を赤く潤ませたサクラが、ためらいながらも小さく微笑んだ。


*◇*◇*◇*


 翌日になり、クロシェが陣営に戻って来た。

「父より、手紙を預かって参りました。それにひとつ、報告申し上げたいことが」

 幕舎に入ってきたクロシェは難しい顔をしていて、書簡を受け取りながら「大丈夫ですか?」と問えば、少しだけ微笑んだ。


「お父様のご様子は」

「それに関しては、ピンピンしておりましたのでお忘れください」

「え? そうなんですか?」

 (にが)い顔になったクロシェに、サクラはジェラルド卿からの手紙を開いて目を落とす。

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