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Ⅳ 手掛かり─ⅳ

 とてつもない難題をぶら下げられたような表情に、これはときめいてどっきどき、などというお花畑な話は聞けそうにないなと嘆息する。


 自分は幼なじみたちの教育を、どこかで間違えたようだ。宮廷では花形と呼ばれても、肝心の想い人の心ひとつ揺らせないとはなんたることか。


「サンドラさんは、クレイセスもクロシェさんもそうだって、なんで断言出来るんですか? こんな子供相手にどうした、って思うのが普通だと思うんですけど。サンドラさんたちにとってはこの世界の常識から教えないといけない、教育の対象ですよね? 妹みたいって心境になるならまだわかる気もするんですけど、そうじゃない視点を持つ意味がわからない……」


 弱り果てたように一気にそう言った少女に、サンドラは笑う。


「ご自分で言っちゃいますかね、子供って。サクラ様の言動は子供のそれではないことなど、誰より我々が存じ上げてることです。日々サクラ様の優しさや直向(ひたむ)きさに接してるあいつらが恋情を抱くのは、別に不思議にも思いませんよ」


 断言すれば、かあっと赤くなる。

 せっかく相談の手を伸ばしてくれたのだ。調子に乗ってその手を引っ込められないようにしなければ、とサンドラは反応の愛らしさに追撃したくなる己を(いまし)める。


「むしろ、なぜ信じられないのです?」

「……宴のとき、綺麗な女の人、たくさんいました。わたしは駆け引きみたいな大人の会話なんかひとつもわからなくて、自分はまだホントに子供なんだなって、自覚させられたんです。わたしには、この世界の貴族が当たり前に備えてる教養なんかないし、顔だって悲しいくらい普通だし、体型だって平原よろしくだし。クレイセスでもクロシェさんでも、わたしじゃ全然、釣り合いなんて取れないですよ……」


 またぶくぶくと半分顔を沈めたサクラに、サンドラは(あるじ)が恋愛にうしろ向きなのは、己に自信がないからかと答えにたどり着いた。


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