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Ⅲ ジェラルド卿の謀 ─ⅹⅷ

「サクラ様を刺した侍女、あれは、術を掛けられたエリオット子爵の娘だったんです」

「フィルセインの刺客として使われたと、そういうこと?」

「いいえ。彼女を仕掛けたのは先代のセルシア、エラルです」

「待って待って、なんてややこしい。先代はじゃあ、生きてるの」


 すでに酒が十分にまわっていることを示す赤い顔をしかめ、父はエラルの生存を確かめる。今それをしたところで、明日の記憶につながるのかどうかを(いぶか)しみながらも、クロシェは淡々と答えた。

「生きています。ダールガットでも、襲撃はあった。サクラ様がエラルの気配であることを断定しました」


「先代が当代を狙う意味がわかんないんだけど?」

「噂が発端だったと彼女は証言しました。フィルセインの手の者が、セルシアになるという噂」

「ああ、それね。聞いた聞いた。うちにもそれを吹聴してたヤツいたし。引っ捕らえていろいろ吐かせたけど、あれだね。フィルセインは噂で民心を惑わすのが好きだね。今その噂の先知ってる?」

 噂の先? とクロシェが怪訝な顔をするのに、ジェラルド卿は教えられるというのが嬉しいようで、内容にそぐわない笑みで以て告げた。


「セルシアがダールガットに来たのは、フィルセインの求婚に応えるためだって。領民は歓喜してるそうだよ」

「な?!」

 クロシェは思わず立ち上がったのを、まあまあと(なだ)められる。


「そもそも、領民には大敗したなんて知らされてないからねえ。聖婚が成れば土地も回復するんじゃないかって大喜びだそうだよ」

 呆然とするクロシェに、父は思い出したのかまた笑った。


「無理だよねえ。あんなおじさん。それこそ少女趣味かっていうんだよ。やつの好みは肉感的な美女であって、華奢で素朴は範疇外だろうに」

「よくご存知で」

「目障りだったからねえ、いろいろと。知りたくないことまで目に入るようになるんだよねえ」

 ああ嫌だ嫌だ、と言う父は、それでもどこか楽しんでいるようにも見える。

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