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Ⅲ ジェラルド卿の謀 ─ⅹⅶ

「なんでこうも可愛げのない子に育ったかなあ……。まあ、育っちゃったもんは仕方ないよね。ハーシェルの隠しごとはね、補佐官殿のことだよ」


 自分は好きなように酒を楽しんでいる所為か、のらりくらりと会話を引き延ばす。

「ユリウスの? 彼が、何かしたのですか」

「違うよ。そこは『彼に何かあったのか』って聞くところなのに、穏当でない関係性が見える聞き方をするねえ」

 言われ、無意識にそんな聞き方をした自分を反省する。内部の軋轢(あつれき)を感じさせるようなことは、今の時勢は特に、慎まなくてはならないことだ。


「彼、殺されたよ」

「え?」

 さらりと告げられた内容に、クロシェは固まる。

「エリオット子爵領にたどり着くまではしたようだね。でも、肝心の子爵には会っていないようだとさ。ユリウスの首が王宮に届けられたそうだ」


「それは、いつの話です」

「届けられたのは、察するにセルシア軍がダールガットで大勝利をおさめた日のようだけどね。だから、三月一日、かな。早朝、門番の前に白い球が転がって来て、拾い上げて布をほどいたら、補佐官殿の首だったとさ」


 父の言うことは間違いないだろう、とクロシェは喉の渇きを覚えて、酒で喉を湿らせた。


 情報を得ることに重きを置いている貴族は、王宮内に己の手の者を何らかの形で潜ませている。ジェラルド家もまた、宮仕(きゅうじ)の中にそういった者を仕込んでいるのは知っていた。


「聞いておきたいんだけどさ。エリオット子爵にわざわざ補佐官が使者に立つって、なんで?」

「そんなことを知って、どうするんです」

「憂いになることなら、備えておきたい。それだけだよ。我が領地が荒れることも、王都が乱れることも、ミッシュが心を痛めることだからねえ」


 どこまで本気で言っているのかわからない。しかし憂いに備えるという点に於いては、告げておくべきかと嘆息した。エリオット子爵領は、ひとつ領地を挟んだ向こう側だ。


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