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Ⅲ ジェラルド卿の謀─xⅲ

 ただ、なれなれしいだけで危険という訳ではないのだろう。商人であるというのをつかんでいる以上、サクラが聞けば素性の詳細は教えてくれるに違いない。本当に危険なら、接見することもなく近衛騎士によって排除されているところだ。


 サンドラの長い指が、サクラの爪を整えていく仕草をぼうっと眺める。

 サンドラの手は、ユリゼラの手に比べるととても硬い。手の形も綺麗なので見た目は婦人らしいそれだが、実際は鍛え上げられた、武人の手をしている。


「ニットリンデンに行ける、ようなことを言ってたんです。無茶なこと、しないといいんですが」

「それは、せっかく助けた命をドブに捨てる行為ですね。多分あいつ、腕はからきしです」

「やっぱり」

 本人も言ってはいたが、サンドラの見立てもそうなのかと華奢な体格を思い出す。


 サンドラは会話をしながらもサクラの爪を整えていき、甘い光沢を放つまでに美しく磨き上げた。サクラは己のビフォーアフターに、サンドラさんすごい、と感謝と礼を述べる。普段は気にもしていないが、こうして整えられれば気分も上がるというもの。


「さあ、お風邪を召さないようきちんと拭いて、暖かくなさってください。日中は暖かいとはいえ、夜はまだまだ冷えます」

 サンドラはそれだけ言い置くと、衝立の向こうに行く。裸を見られるのを嫌がるサクラを尊重してのことだ。


 サクラは手早く着替えると、衝立から出た。


「ありがとうございます、サンドラさん。めちゃめちゃ気持ち良かったです」

「ようございました。お顔の色もはっきりなさいましたね」

 言いながら丁寧に髪を拭いてくれるサンドラに、猫が喉を鳴らすのがわかるような気分で甘える。


「お休みになれそうですか?」

 頷けば、サンドラは片付けてから戻ると言い、サクラを寝台に促した。

「幕舎のすぐ外にはバララトとシンがおります。イリューザーがいるので心配はしてませんが、何かありましたらすぐにお呼びください」

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