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Ⅲ ジェラルド卿の謀─ⅹ

 自覚があるならいいというものでもないらしい、とサクラは口許を抑える。

 確かにデュエルは、細い。サクラよりは大きいが、騎士が横にいると、とても華奢に見える。腕っ節がまるでなさそうな感じが警戒心を誘発しないというなら、それはそうかもしれないと思えるほどの、説得力になるほどには。


「でも、危険なのは変わりないし。何かあっても対抗手段がないならやっぱり」

「あるよ」

「え? 腕に自信あり?」

「いや。逃げ足に自信あり」

「……」

「なんでそんな冷たい目でみるのさ、やめて、泣いちゃう」


 ちょっとでも期待したことを損した気持ちになり、冷めた気分で投げた視線は余程効果的なのか、デュエルは情けない顔でそう言った。


「どっちにしろさ、動けないんだろ?」

「それは、まあそうだけど。何か、考えるよ、ちゃんと」

 まったく、何も思いついてはいないけれど。考え続けていれば、何かひらめくかも知れない。


「いってえな!」

 そう思ってうつむいたところでデュエルの悲鳴が上がり、顔を上げれば。


「何を困らせている?」

 と、周囲の気温が一気に下がりそうな表情で以てクレイセスがいた。右手はデュエルの頭をバスケットボールのごとくにつかんでいて、気の所為でなければデュエルの足が浮いている。ああうん、痛そうだねそれは、とサクラは剣呑な雰囲気の二人を見守った。


「はーなーせー! ちょっと顔がいいからって横暴なヤツだな!」

「セルシアに対して礼儀を知らない小僧に四の五の言われる筋合いはない」

 にべもなく言い放つと、クレイセスは遠くに押しのけるようにしてデュエルを放した。


「サクラ、馬鹿が感染(うつ)る前に中へ」

 今日一日、デュエルの奔放な言動にクレイセスがときどき苛ついているのはわかっていた。この二人は馬が合わないらしい、とサクラは素直に幕舎(ばくしゃ)へと入る。

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