Ⅲ ジェラルド卿の謀─ⅷ
夜。従騎士たちと食事を摂りながら、ニットリンデンへ向かう方法について話し合う。ニットリンデンについては、地形以外の情報がまるでない。
「間諜を送っても、今のところ全滅ですからね。せめて駐屯している兵の数さえわかれば、まだ動きようもあるのですが」
ガゼルが悔しそうにそう言うのに、サクラも「そうですね」と頷く。
ダールガットの精霊にニットリンデンの楔を抜けと言われた以上、それを目指すことはセルシア騎士団において至上命題だ。サクラが足を踏み入れた場所は、いずれも順調に正常を取り戻している。
「クロシェさんの軍は、今頃どうなってるでしょうか……距離的に、もう着いてる頃ですか?」
その質問に、サンドラが頷く。
「各営所から隊を吸収しながらです。いくら急いでも、ちょうど今時分に前線到着ではないかと」
「ニットリンデンに行く前に、応援に行ったほうがいいことはないでしょうか?」
「戦線が拡大するようなら、そちらを優先すべきでしょうね。まずは報告を待ちましょう」
サンドラに頷くと、サクラは目の前の食事を片付ける。
帰って来てから疲労を覚え、二時間ほど眠った。今は元気だが、力を使うと極度の眠気に襲われることはわかった。
そしてここに来てから、レア・ミネルウァの気配を今までよりも近くに感じる。
「ジェラルド卿の怪我も心配ですしね。早いところ片付けられるといいんですが」
ガゼルが木の実を口に入れながらそう言うのに、銘々が頷いた。
「そう言えば。明日中には遺体の回収は終わりそうです。鎮魂の儀式をなさいますか」
「はい。どの程度の効果があるのかはわかりませんが……儀式して、送りたいです」
わかりましたとガゼルは言うと、それを指示するためか、幕舎の外に出て行ってしまう。
この村の復興をしながら、ニットリンデンの様子を探る。戦線が新たに開かれることがないよう、気をつけることもしなくてはならない。




