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Ⅰ 春希祭(キアラン)─ⅴ

 丁寧に(くし)を入れてくれるクロシェの手許(てもと)を、アクセルが凝視している間接的な視線を感じる。ふと視線を上げれば、クレイセスも腕を支柱にこちらを眺めていた。


 クレイセスの視線はときどき、何かもの言いたげだ。咎めている訳ではないが、何かを探ろうとするような。だからと言って尋問されたことはない。(つつ)いて蛇出て来ても嫌だし、とサクラも特には聞かないでいる。


 それにしても、連日の対応に疲れているのか、今日のクレイセスはどこか脱力状態だ。対外関係は理性的に、笑みすら浮かべて対応しているが、ときどき若さを揶揄(やゆ)するような発言も聞こえた。切ってしまいたいと思うこともあるに違いない。


 クロシェが整髪料をつけ、慣れた手つきでサクラの髪を編んでいく。上半分を編み込んで留め、光沢のある白いリボンを結んでくれた。下半分は香油を付けられ、さらに念入りに梳かされる。


 この世界に来たときには肩にかかる程度だった髪も、今では肩甲骨を隠す長さになった。サクラとしては面倒なので、手のかからない長さに切ることも考えたが、強くないなら髪は伸ばしておいたほうがいいようだし、お洒落の面からも「淑女として長い髪は必要です」と長官たち全員に言われ、伸ばす方向で整えている。


 サラサラに仕上がった髪に、アクセルの感嘆の声。確認するよう手鏡を渡されて、もう一枚で髪を映して見せてくれたそれは、サンドラがしてくれるのと同じように、綺麗に仕上がっている。


「すごい。ありがとうございます」

 仕上げるまでに十分というのも、サクラにとっては驚きの早さだ。


「じゃあ、わたし着替えてきますね。サンドラさんが戻らないようだったらお願いします」

 言い置いて部屋を出て、寝室まで戻る。扉の前までアクセルがきちんと付いて来て、中にイリューザーがいることを確認してからサクラを入れ、扉を閉めた。

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