表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/218

Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹⅹⅺ

 サクラは、それがなんの問題なのだろうというような顔で見ている。彼女には、異腹(いふく)の兄弟が仲良く手を取り合う美談に聞こえるだろう。


「兄は、領民に慕われています。父や俺の名で手腕を発揮し、自分は徹底して表に出ない。秘書としての領分をわきまえ、血筋を盾に振る舞うことは一度だってありません。俺はね、サクラ。カイに、アリアロスを継がせたいのです」


「ああ……そういう……」

 結論に得心したのか、サクラの表情が和らいだ。


「俺が死ねば書類上は簡単です。ですが、それではカイも気に病むでしょう。俺は、正当な形でアリアロスを離れる理由を探していた。あなたがこの世界を離れるなら、俺はそこについて行く。従騎士(ヴァルフレイア)の誓いを、違えることはありません。そして兄は、ようやく本来の場所で、本領を発揮出来るようになる」


 この話で、「利害の一致」を見たかどうかは、サクラの反応では判然としない。しかし、「逡巡」させることには、届いたようだ。


 黒い瞳が揺れるのに、クレイセスは言った。

「約束です。最奥に戻ったら、聞かせてください」

 無言のままのサクラだが、彼女の性格上、反故(ほご)にされることは心配していない。聞いてしまった以上、約束は果たされるだろう。


「カイさんに……ガゼルさんは、会ったことがありますか」

 ガゼルが一時期をアリアロスで過ごしたことを知っているサクラの質問は、カイという人物を別の視点から探ろうとするものだろう。


「ありません。ガゼルが領内にいるとき、俺はカイのところには行かなかった。カイはね……父に、よく似ているのですよ。ガゼルに引き合わせでもしたら、きっとすぐにすべてを了解するでしょうからね」

 なるほど、とサクラが呟く。


「じゃあ、領内では割と有名なこと?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ