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Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹⅹⅹ

「そうです。両親も知らないかもしれませんね。俺たちが懇意(こんい)の仲であることを。俺は領内の仕事を覚え始めたとき、面白半分に両親の行動を探ったのです。そこで、彼の存在を知った」

「なかなか強烈な認識の仕方ですね……」


 話を始めて何度目かのドン引きをされながら、クレイセスは続けた。


「見に、行ったのです。物陰から見るだけのつもりが、カイが飼っていた犬に見つかり、川に落ちた」

「クレイセスにしては、珍しいような」

「そうですね。我ながらそう思います。それほど、俺は緊張もしていたし、まわりが見えなくなっていたのでしょう。十三歳の彼に見つかりましたが、俺を見るなり彼は言ったのです。会いに来てくれたのかと」


 犬を制し、川から引き上げながら、彼はそう言った。

「『俺もずっと、会ってみたかったんだ』と言って、屈託なく笑ったのです。俺は子供心にも、彼に恨まれていると思っていたのに」

 予想を裏切る笑顔と対応に、クレイセスは面食らった。その衝撃を思い出しながら、クレイセスはあたたかい気持ちで微笑む。


「『お前、テラ様そっくりだし』と言って、誤魔化そうとした俺を家に入れてくれました。父も母も、一緒に来ることこそなかったが、別々に、領内で暮らすこの親子のことを気にかけていたようで。カイは、母にもよく懐いていて……カイの母である婦人も、俺にとても良くしてくれました。領地に行けば、両親の目を盗んでカイに会いに行くことは増えた。彼は、いろいろなことを教えてくれました。さりげなく領民と俺をつないでもくれたし、領内の問題も、解決するための手立ても、『最悪』を考えながら先回りする思考の仕方も。あなたは感心してくれるが、俺は俺の才で今がある訳じゃない。カイの背中を追っているに過ぎません。ある日、彼が言ったのです。『ラグのことは俺がちゃんと補佐する』と」


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