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Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹⅹⅸ

「ですが、母が勧めたそうです。一年生まれなければ、跡継ぎを設けることを理由に外に(めかけ)を作る貴族は多い。ですが父はそれをしなかった。母は領地に行ったとき、父のことを慕う視線に気付き、彼女ならばと思ったのだとか。父は渋ったものの、関係を持ったそうです。それから一年後、男児が生まれた。彼の名前はカイ。今年三十一になる」


 どうしてそんな話をするのかわからない……そんなふうに瞳が揺れるのに、クレイセスは笑った。洞察力と勘のいいサクラを出し抜けたようで、少し小気味良さすら覚える。


「兄はね、ものすごく出来がいいのですよ」

「は……?」

 ますます混乱を極めるサクラに、クレイセスはまた少し笑った。


「能力も性格も。今のままでは、兄は認知すらされない」

「認知すらされないって、どういうことですか」


「妾に子供が生まれた場合、その子が十歳になるまでに嫡子(ちゃくし)となる子供が生まれなければ、嫡子として認められ、引き入れられます。しかし彼が五歳のときに、俺が生まれてしまった。今のカイは、父親もわからない私生児のままです」

「生まれてしまったって……そんな言い方」

 サクラが小さく(たしな)めるのに構わず、クレイセスは続ける。


「しかし父は悩ましかった。幼い頃から利発さを見せた、初めての子供です。一緒に暮らしていなくとも、素直に自分を慕う息子を可愛く思っています。今は出自を伏せ、アリアロス領の本邸で父の仕事を秘書のような形で手伝っていますが、その手腕は卓抜(たくばつ)している。混迷する今の時代にあってアリアロス領が安定しているのは、カイの手腕に寄るところが大きいのは確かです」


 クレイセスが説明すればするほど、サクラの眉間の皺は深くなっていく。

「なんで……? あなたはその人を、慕ってるんですか……?」

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