Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹⅹⅴ
「リシュティーノ様は予言の中で仰った。俺たちに心を預けろと。しかしあなたは……頼りにはしてくれてるのでしょうが、肝心なことは何ひとつ教えてくださらない。あなたが抱えているものは、なんなのですか。あなたがリシュティーノ様から見せられた未来もそうです。あなたは誰にも話さないままずっと一人で抱えている。倒れるほどの衝撃を、なぜ一人でどうにかしようとするのです。なぜ手を伸ばさないのですか。俺たちはサクラ、あなたに付いていく覚悟を示しているつもりです」
「それは……」
視線が床を見つめ、もの言いたげに揺れる。しかし、沈黙が再び流れるばかりで、クレイセスは言い募った。
「あなたを理解したくとも、あなたから距離を置かれてはどうしようもない。俺はサクラのこれからを受け止める覚悟もあるし、過去についても同じです。解決出来ることばかりでなくとも、ともに考えることは出来るはず」
「そんなの、無理じゃないですか……」
聞きたくないとでも言うように、細い声が振り絞るようにして遮る。
「なぜ……無理だと?」
ドレスを握り締めた手はわずかに震えていて、奥歯を噛み締めているのも窺えた。
一緒にあり続けると言うそれを、出来もしないことと、サクラがそう判断していることはわかった。しかしクレイセスには、これ以上何をもって示せばサクラに寄り添えるのか、覚悟として受け止められるのかがわからない。
「サクラ」
握り締めている手を解そうと手を伸ばせば、拒絶するように振り払われ、顔を背けられた。




