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Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹⅳ

「開戦の知らせに気が(たかぶ)っておられれば、ご自分の体調を押してしまうのもわからなくはないのですが。どうかご相談ください。サクラ様が体調を調えるために休む時間を捻出(ねんしゅつ)するのも、我々の仕事です」


 そう言いながらサクラを降ろし、バララトは年配者らしい落ち着きで以て優しく諭す。


「ありがとうございます。移動中に寝ちゃった所為か、今はすごいすっきりしてます」

「回復が早いのは、若さですかね。そこは素直に羨ましい」

 そう言って笑ったバララトに、サクラは少し微笑んだ。


 そうしてサクラは(ヒール)を脱ぎ、一番大きな木に根を伝って駆け上がると、そっと額を幹に重ねた。

 初めてそうした日に比べれば、息苦しさはもう感じない。水の流れる音すら聞こえた気がして、サクラは顔を上げた。


「急なことだけど、明日の朝早く、ここを発つことになりました。きっとこの森には精霊がいるのでしょうけど、お目にかかれなくて残念です。ずいぶんと荒らしてしまいましたが、ここが侵略されることはもうありません。どうか、これからもこの土地を守り、レア・ミネルウァに力を与えてください」


 すべすべの幹に手を当ててそう言うと、サクラはまた駆け下りる。


 最後に一曲だけ、この世界に来て最初に歌った歌を歌った。


 ダールガットは、大きな街だ。この森にも人の生活圏があるが、街からそう遠くない場所にそれらは形成されていた。人が足を踏み入れてはならない領域は、維持されている。


 サクラは、人の生活圏からはずれたこのあたりにこそ、精霊たちの気配を感じるのだが、今までに遭遇は出来ていない。自分が気付かないだけかと、近衛騎士たち全員の目に触れて、見えるようにもしている。しかし誰の目にも、姿を捉えることは出来なかった。

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