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Ⅱ アリアロスの秘密-ⅹ

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 額を床にこすりつけ、涙声で礼を言うテティアを見ながら、二人は何事かと怪訝(けげん)な顔で室内に入って来る。


「彼に休めるような部屋を。衣類も整えてあげてください」

「御意」

 近衛騎士二人はテティアを連れ、執務室を出て行った。

 静かになったところで、サクラは二人を見上げる。


「ジェラルド侯爵から、救援の要請が。ご本人も負傷し、重篤とのことです」

「ジェラルド卿が?!」

 二人の声が重なり、顔色が変わる。


「アットゥディーザ伯爵が反旗を(ひるがえ)し、領境で応戦中だそうです。クロシェさんとツイードに、ここから近衛五人と騎馬三千を、ジェラルド領内の営所から千五百を吸収して鎮圧するよう命じました。アットゥディーザ伯爵の反旗に呼応するように、フィルセインが背後の村を急襲して殲滅(せんめつ)、今の彼はその隣村、オクトランから救援を求めて来た人です。それも、半数が殺されたと。わたしは残りの二千でオクトランに行きたいです。王の許可もなく、それは可能ですか」


 懸念(けねん)したのは侯爵領────ひいては王の領地に許可なく軍を入れることが、セルシアによる「侵略」行為と取られてしまうこと。しかしクレイセスは、あっさりと応じた。


「それなら、ハーシェルに一筆書かせて来ましたので問題はありません」

「は?」


「もともと戦い方次第ではジェラルド侯爵領にかかると思っていたので。『近隣諸侯より救済の請願があらば、速やかな対処を願う』と。仮に侵犯(しんぱん)してしまった場合、ジェラルド卿なので話はつけやすいと思ってましたから、そのときは形だけの救援要請を出してもらうつもりでいました」


 そう言うとクレイセスは一度部屋に戻り、細い黒塗りの筒を持って来てサクラの前で開封する。王家の紋章が透かれ、金の飾り枠が施されている厚手の紙には、王の筆跡でクレイセスが言ったとおりの文章が記されていた。

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