Ⅱ アリアロスの秘密-ⅱ
この祭りは、三日間行われるのだとか。大きな祭りだけに経済効果も見込まれることから、あのまま中止になることは心配していた。
「じゃあ、午後から森に行ってもいいですか」
「森に、ですか」
「昨日の反応、やっぱりここはひどく痛手を受けてるのか、薄かったんです。精霊の気配は感じました。彼らを癒やせれば光響の反応ももっと得られるし、この土地の痛みも、和らげることが出来るかもしれません。そもそも、わたしがここに来た本来の目的は、この土地を癒やすことですし」
そうでしたね、と、サンドラが笑う。フィルセインを後退させることはもちろんだが、サクラがわざわざここまで出向いた理由はそれだ。せめてこの土地の光響に、色を取り戻してから王都に戻りたい。
「フィルセインを撤退させるためとはいえ、痛みを覚えてるところにわたしはまた、多くを殺しました。エラルさんや見えない襲撃者のことが懸念されるのもわかりますが、セルシアとしての本来の仕事をしたいです。近衛騎士たちは、動けそうですか?」
「昨日はあれから近衛騎士隊も休んでいますので、ご安心ください。皆すぐにでも動けますよ」
「そうですか。じゃあ、みんなの食事が終わったら、同行をお願いします」
承知しました、と微笑み、サンドラは出て行く。
イリューザーがパンの匂いを嗅ぐのに鼻先に差し出せば、薄く口を開く。そこにひとつ丸ごと入れてやれば、ふすん、と満足そうに鼻を鳴らして咀嚼した。イリューザーが食べるだろうことを見越して、彼が興味を示す食材に関しては、いつも多めに盛ってくれている。
濃厚な卵の味、ふんだんに使われたバターの風味が広がるパン、爽やかな緑の香りにコクのある牛乳を堪能して、サクラは食事を終えると、大地に感謝の祈りを捧げた。




