Ⅱ アリアロスの秘密-ⅰ
目が覚めたのは、すでに正午に近い時間だった。
うわ、と体を起こせばすでにサンドラの姿はなく、サクラは急いで着替える。
ゆうべはあれからもう一度、サンドラに付き添われて眠った。すっかり目は覚めていたが、サンドラが「よく眠れますよ」と、いい香りのするお茶を用意してくれて、少し話をしているうちに、四時近くになって眠気が来た。二時間くらいで起きられるだろうと布団に潜ったが、それからしっかり眠ってしまったらしい。
「あら。お目覚めでしたか」
「ごめんなさい! 寝過ごしてしまって……」
着替え終えたときにサンドラが現れ、サクラは慌てて謝る。
「構いませんよ。昨日のようなことがあれば、お疲れでしょう。今日は特別予定もありませんでしたし、ゆっくりなさってください」
トレーに簡単な食事を運んで来たのをテーブルに置きながら、サンドラは笑って言った。
「ただ、食事くらいはと思いまして。そろそろ起こそうとは思っておりました。ここに来るまでにサクラ様、ちょっとお痩せになりましたしね。食べられるときには、しっかり召し上がってください」
カーテンを開け、窓を開け放ちながらそう言うサンドラに、サクラは「はい」と頷く。
差し込んだ陽光と、爽やかだがまだ冷たい風に、寝台の下にいたイリューザーも大あくびをして伸びをした。
なんだか久しぶりに長閑な気持ちで、サクラは用意された食事に手をつける。絞りたての牛の乳、焼きたてのパンと、葉がやわらかい若葉のサラダ。半熟の卵も上に乗せられていて、サクラはそれらをゆっくりと味わう。会食で出される豪華なものより、ずっとおいしく感じられた。
「お祭り、本当にあのまま中止に?」
「いえ。サクラ様のお出ましはなしということで、祭りだけは続けていいと伝えています」
その答えに、サクラはほっと胸を撫で下ろす。




