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Ⅰ 春希祭(キアラン)─ⅹⅹⅱ
そうかそれアリなのかと一瞬思わないでもなかったが、考えていたのはそうじゃない。
「いえ。補佐官にと思ってたんですけど……その譲位、アリなんですかね?」
「ナシです‼」
まわりを取り囲む騎士たちから一斉に言われ、サクラはのけぞる。
そして静まり返った営所内。
静寂を破ったのは、堪えかねたようなサンドラの笑い声だった。
「いいツッコミだな! サクラ様に対するお前たちのあっつーい思いは良ーくわかった」
それにクレイセスがフッと笑い、「本当にな」と同意する。
営所内に、なんとも言えない照れくささが充満する。
「エラルの件に関しては、承りました。状況が許せば、話をする糸口を我々も探します」
クレイセスがいつもの口調でそう言うのに、サクラはほっとする。
「さあ。我々も解散しますから、あなたも休んでください、サクラ。起きるにはまだ早すぎる」
クレイセスがサンドラに視線を送り、彼女は笑顔で「戻りましょう」と促した。
サクラは頷いて、もう一度寝室へと戻ったのだった。




