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Ⅰ 春希祭(キアラン)─ⅹⅹⅰ

『彼女は本当にフィルセインの立てた偽セルシアなのかしら』

『滅多なことをいうもんじゃないよ。怒らせたら食われちまうかもしれないだろ』

『でもフィルセインを討ったんだから、やっぱりやつらの計略なんだよ、そうやって疑わせることが』


 予定よりも早く着いた会議所で、サクラがすでにいるとは知らず、次の間にいた給仕たちがそうやって話をしているのを聞いた。そのときやっと、この土地に来て最初に感じた視線の戸惑いは、疑いだったのかと得心したのだ。


 サラシェリーアは、噂を信じてセルシア暗殺を目論んだ。エラルはきっと、いまだにその噂を信じているのだろう。きっと信じるに足る、信憑性がどこかにあったに違いない。


 セルシア選定の際、世界の様相がまるで変わったと聞かされた。しかし、それをもってしてもまだ、フィルセインの手の者であるという疑惑は、晴れていなかったのだ。今回、フィルセインを大敗させたことでダールガットの者たちにはその疑惑を薄めたようだが、一度根ざした疑いは、簡単には晴れないのだろう。


「どこで、それを?」

 クレイセスの鋭い視線を受け流し、サクラは続ける。彼らはサクラの耳に入れるつもりはなかったのだろうが、耳に入れた人間を罰したところで、人心の疑いが晴れる訳でもない。


「エラルさんがこちらについてくだされば、少なくともその噂を軽減させることには繋がると思います」

「サクラ様を殺そうとしているのですよ? 見つけたら、殺すべきです」

 クロシェの強硬な発言に驚いたが、何人かの騎士が頷く。


「いいえ。わたしは異能についても、自分自身の力についても、あまりにも無知です。彼の理解を得た上で、戻ってきて欲しい」

 その答えに、いつもは温厚なバララトが厳しい表情をすると、目を細めて言った。


「まさかとは思いますが、サクラ様はエラルを戻してセルシアを譲位なさるおつもりが?」

 バララトの発言に全員の目が見開かれ、サクラに集中するのがわかった。

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