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Ⅸ 陰謀の切っ先─ⅹⅴ

「こっち側から見える範囲に見張りはいません。でも、出られそうな場所もありませんでした」

「そうですか。それでは、反対側に向かいましょう。廊下を出てすぐ、最初の窓から外に出ます」

 頷けば、クロシェはそっと扉に向かうと細く隙間を開け、見張りがいないことを確認するとサクラを伴い、部屋を出た。


 そうして打ち合わせたとおり、一番近い窓から外に出る。


 クロシェはそっと窓を閉め、周囲の気配を伺いながら、サクラに「こっちに」という目配せをして動き出した。


 直後。

 きゃあ! という夫人の悲鳴が外まで聞こえ、サクラは身を(すく)める。脱出がバレたことは明白だ。


「急ぎましょう」

 クロシェが小声で言い、まっすぐ正面の門に向かって走り出す。門といってもサクラの胸の高さほど。振り向いて見た家は、貴族のというよりは、平民の家のようだ。ぱっと見、観光雑誌で見たことのあるようなおしゃれなペンションじみた外観は、夫人が趣味を実行するための「隠れ家」として十分機能を果たしている。


 まわりは木々が林立する場所だが、下り坂の少し先には、小さく街が見えた。

「サクラ様」

 門を乗り越えさせようとクロシェが手を伸ばしたとき。


 敷地内にはいなかった黒ずくめが五人、ざっと行く手を阻んだ。

「これはこれは。存外活きのいいセルシアですね」


 ざらざらとした声。クロシェがうしろにかばうが、黒ずくめたちは軽々と門を乗り越え二人を囲む。ばたん! と勢いよく扉が開く音がして、夫人が高らかに笑う声がした。


「クロシェに傷をつけたら許さないわよ。セルシアは、多少傷つけても構わないわ。むしろちょっと大人しくさせてちょうだい。歌えさえすればレア・ミネルウァを大人しくさせられるようだけど、このままでは私、目どころか喉を掻き切ってしまいそうだもの」

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