表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/218

Ⅸ 陰謀の切っ先─ⅹⅲ

 クロシェを助け、サンドラを助けに行かなくては。彼女はとにかく、逃げて生き延びることが大事だと自分に教えた。


「悲鳴を聞かせたら起きるかしらね? ああでも、彼女の悲鳴だから起きた、なんてことならかなり妬けてしまうわ。なんたって誰にも見向きもしなかったクロシェが、執心しているんですもの」


 そうなった原因は間違いなくあなたですけどね? と思いながら、サクラはゆっくりと手首を動かす。縄抜けも教わったのだが、成績は今ひとつだった。


 道具の準備をしなくては、と出て行く公爵夫人の気配。

 同時に男の気配もなくなった。


 サクラは扉がしっかりと閉じた音を確認して、上体を起こす。足の紐をほどいて立ち上がれば、寝台に寝かされているのはやはりクロシェだ。


「クロシェさん、クロシェさん」

 腕を少し揺らしてみるも、目を開く様子はない。顔色は悪く表情も苦しげで、うっすらと汗すらにじんでいる。先程の会話から致死でないとはいえ、毒を仕込まれたのだろう。傷口はどこだ。癒やせればクロシェが動けるようになるかもしれない。


 サクラはクロシェの全身を見て、左手の甲に走った傷を見つける。手離がかすった跡だ。ほかに傷らしきところは見つからず、全身に回っているらしい毒を手から治せるだろうかと、サクラは手に触れるか触れないかの距離で両手で包むように翳し、集中した。


 クロシェの額に、フィデルが色濃く浮かぶ。


 彼の忠誠に刻んだ癒やしの力が、すでに毒に反応しているのだとわかる。手の甲の傷は見る間に治ったが、果たして体内を巡った毒はどうなのか。


「クロシェさん」

 もう一度呼びかければ、長いまつげが震えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ