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Ⅸ 陰謀の切っ先─ⅹⅱ

「あの小僧、少し痛め付けても?」

「あらダメよ。でもその(ひたい)滑稽(こっけい)ね? どうしたことかしら」

「あの小僧、見つけたときに叫びながら頭突(づつ)きくれやがりまして。くそっ……あれから力が使えない」


 石頭め、と忌々しげに呟く男に、夫人がころころと笑う。


 あ、そうだったの、とサクラは額の痛みの謎が解けた。額を傷つけたら力が使えなくなるとは、最初の頃に聞いた。この男は今きっと、その状態なのだろう。


「それにね、あんなに真っ平らでも女の子なのよ? 彼女はハルにあげる約束なの。目を私が取り出してから、ね? ああ……髪も切っておかなくては。それに珍しい色の皮膚も少し」


 舌足らずな話し方が、一気に機嫌を取り戻す。


「歌えさえすれば彼の役には立つでしょうから、生きていれば文句はないと思うの。あれは私に恥をかかせたわ。本当なら鼻も耳も、()いでやりたいくらい」


 なるほど、とサクラは彼女が収集家の一人であることも、納得した。キャリックが聞いたという女の声は、ひょっとすると彼女かもしれない。


「ああ……ゾクゾクするわ……。うふふ。少し髪が伸びて、放埒(ほうらつ)な感じがまたいいわ……」

 そうして、ぎしりと寝台が揺れた。

「ようやく、私のものになるわね、クロシェ」


 やはり。

 しかしクロシェになんの反応もないところをみると、彼の意識は戻らないままなのだろう。


 どう動けば、互いに助かる道に繋がるだろうかと、サクラは寝台の向こう側で話す二人の声を聞きながら逃げられそうな場所を探し、手の拘束を緩めようと秘かに足掻く。


「お楽しみは取っておかなくてはね。まずはあの黒目。早くくり抜かなくては」


 嫌な台詞に、サクラは内心で「げ」と焦りの声を上げ、とにかく手首の拘束から逃れようと試行錯誤を繰り返す。そうしている間に腹部にいたはずの精霊がいないことに気がつき、もう一度あたりを見回すがその姿を確認出来ない。途中で逃げていてくれたらいいと願いつつ、今は縄抜けに集中した。


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