表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/218

Ⅸ 陰謀の切っ先─ⅰ

 明け方近くになって、サンドラが窓から帰還した。

「サクラ様、申し訳ありません。すまなかったな、カイザル」


 カイザルは結局、もうひとつあるベッドに休むことはせず、ベッドの下にうずくまるイリューザーと向き合うようにして座り、ほとんど不寝(ねず)の番をしていた。なので、二階のバルコニーの手摺りに立ったサンドラが、剣で窓の端を叩いたときも、すぐに応じて彼女を迎え入れた。サクラが気付いたのは、カイザルが窓を開けたときだ。それまでちっとも気が付かなかった。


「サクラ様。慌ただしくて恐縮ですが、すぐにここを発ちます。レミアスには受付に書き付けを残しましょう」

「それは、大丈夫だと思います。ゆうべ、エラルさんと話が出来たので」


 それに、サンドラが目を見開く。

「エラルが。来たのですか」

「来てくれましたよ。ユリゼラ様と対な感じに綺麗な人でした。補佐官として付いてくださる約束もとりつけましたし、王都で会いましょうということになってます」


 サクラの言葉に、サンドラは戸惑うようにカイザルを振り向く。

「それどころか。彼も『従騎士(ヴァルフレイア)』として、誓いを」

「なんと……」

 驚くサンドラを横目に、サクラは「なので、色々と大丈夫ですよ」と笑えば、「詳しい話をのちほど聞かせてください」と微笑み、サクラの荷物をまとめると窓から下に投げ落とした。


 下を見れば、クロシェが受け止めている。

「イリューザー、お前、ここから飛び降りられるか?」

 サンドラが訊けば、イリューザーは眠そうに欠伸をひとつすると、前肢を窓枠にかけて下を見る。そしてそのまま、お座りをした。


「無理っぽいですね……」

「仕方ありません。オルゴンは基本的に大樹に棲息しているので、もしかしたらと期待をかけただけです」

 初めて聞くオルゴンの生態に、サクラはこの巨体をして安全な木というのは、余程大きくないと無理だろうなぁとダールガットで見た大樹を思い出す。


「イリューザー。お前、ツイードのところまで表から走れ。静かにな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ