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Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅹⅵ

 カイザルが答えれば、「また王都で」とサクラに視線をやり、エラルはすぐに姿を消した。


「サラシェ、面食いだったんだなー……」

 まだ訊きたいことはあったのに、と思いながら呟いた感想に、緊張していたらしいカイザルが噴き出すように笑った。


「なんですかそれ」

「エラルさん、絶対あれでしょ。『ときめき通信』常連記事だったんじゃないんですか? めっちゃ綺麗な男の人でしたね」

「サクラ様のお好みは、エラル様のようなご容貌で?」

「そういうのとはちょっと違うんですけど……なんていうか、美術品みたいだなと。ユリゼラ様がお日様なら、エラルさんはお月様みたいな」


 冴え冴えとした美貌だったなあと、サクラは消えた場所をまじまじと見つめる。静かな足取りで戻ってきたイリューザーは、不服そうな眼差しをサクラに向けているが、一連の事態は理解しているのだろう。しかし落ち着かない様子で、サクラの体にこすりつけるようにしながら一周する。


「確かに、補佐官時代のエラル様に想いを寄せる婦女子は多かったように思いますが。セルシアになってからは、怒らせたら食われるかもしれないことを考慮するのか、通信員はそれほど追わなくなりましたね。それに変わるようにクレイセス様とクロシェ様が、世の女性の人気を二分する勢いで台頭(たいとう)してきたのもありますか」


「救護舎手伝ってたとき、『ときめき通信』は見なかった気がするんですけど……」

 まだあの頃は、字を読むのも覚束(おぼつか)なかった頃だ。ひょっとするとみんなが読んでたゴシップ紙にあったのかな、と思いながら言えば。

「いや……救護舎、基本野郎ばっかじゃないですか。あの紙面をどうどうと愛読出来るとか、神経の太さの方向性を疑います」

 とカイザルがなんとも微妙な顔をして答える。


「その辺に売ってるなら、明日にでも手に入れたいです。『ときめき通信』」

「マジっすか……」

 頭が痛い、というようにこめかみに手をやったカイザルに、サクラは落ち着かないイリューザーの背を撫でながら「マジです」と笑った。


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