Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅹⅳ
エラルの申し出に、サクラは目を見開く。
「そのやり方で、本当に……?」
「今のところ、それしか思いつくものはない。私の術がかかった状態でなおアプリーゼが心を寄せ、カイザルたちが主にと望むほどだというなら、人柄の心配はないだろう。……鬱陶しくてかなわないんだ、この術は」
鋭さの消えた、凪いだ瞳でそう言われ、サクラは頷いた。
サラシェリーアのときは、きちんと出来なかった。
彼女が心を寄せ、守りたかった人だ。それで助かるのなら、サクラに躊躇する理由はない。
手を、と言われ、サクラは右手を差し出す。「そなたの真名は」と問われ、「今はサクラ・ナナセ=レア・ミネルウァです」と答えれば、騎士の誓いと同じように、エラルが己の真名をサクラに開示する。
「私エラル・ロヌティエは、恒久の忠誠をサクラ・ナナセ=レア・ミネルウァに捧げることをここに、誠心より誓う」
「その誓いを許します」
サクラの声が言い放てば、エラルの体が金色に包まれた。そのとき彼の頭に、嵌まっていたかのような輪が浮き上がった。と同時に白くはじけ、それから金色に輝くフィデルが額に現れる。
「……助かった。今後は、そなたの望むとおりに動こう。だが、ひとつだけ言っておく」
「なんでしょう?」
「私は有事にあって出奔していた王子を許すことが出来ない。補佐官である以上、王族との接触が避けられないことは承知しているが、極力断る」
「……善処します」
エラルの決意めいた「お断り」を、サクラはとりあえず承諾する。ハーシェルの立場や経緯も踏まえた上で言っているのであろうし、そのあたりの人間関係に関しては、わだかまりを解くのに時間をかけていくしかないのだろう。
「オフィーリアとレミアスさんは、どうしましょう? このまま一緒に連れて行くほうがいいですか?」
「そうだな……カイザル。お前たちは狙われていることはわかっているか」




