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Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅸ

「そうです。少なくとも正面からは帰って来られません。何人で来てるかわかりませんが、裏口も張られてるでしょうしね」


 サンドラは昼間の泥棒を、近隣の営所の騎士に引き渡すまで残った。彼らはフィルセイン陣営からの脱走兵らしく、ここからは随分と距離のあるドゥファというところからようやく逃げてきたという。クロシェは一緒に戻ってきたが、もう一泊するのならとツイードと一緒に出て行った。果たして帰って来ることが可能なのだろうか。もう別のところに宿泊したほうが安全なんじゃないかと、彼らの身の上が心配になる。


「その『ときめき通信』、今度読んでみたいです」

「え? ご覧になりたいのですか」

 目を丸くするカイザルに、サクラは頷く。

「どの程度のことが書いてあるのか、把握しときたいですし。どのくらいの頻度で発刊されてるんですか?」

「月に二度です。大きな舞踏会や茶会が開かれれば、臨時号が出ます」


 内容の割に頻度高いような、と(うな)る。字も読めるようになったし、この世界で発刊されている報道媒体にも、ひととおり目を通しておくべきだろう。規制が出来ない以上、自分の行動を戒めるしかない。


「多分、その辺でも売ってますよ。平民の女性にも人気があるせいか、頒布(はんぷ)地域は広いんです」

「へえ……。それにしても、クレイセスたちって大変ですね。王宮ではご婦人たちを警戒して、外に出れば通信員を警戒して」

「甘いですよサクラ様。通信員は王宮内にも人を送り込んでいます。どこで何を見られているのか、わからないから恐ろしいのです」

「もう……いろいろ言われること承知で、恋人はイリューザーって発表したい……」

 テーブルに顔を突っ伏し、サクラは膝に頭を載せてきたイリューザーを撫でた。


 カイザルは立ち上がって扉まで行くと、ぴったり耳を寄せる。

「困りましたね。あいつ、まだ諦めてないようだ」

 階下でのやりとりが聞こえるのだろう。カイザルは扉を離れると、窓枠に接しているほうのカーテンをそっと避け、暗がりのあたりを見回す。三箇所ある窓のすべてをそうして確認し、テーブルに戻って言った。

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