Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅷ
「今回はガゼル長官以外みんな揃ってますからね。しかもサクラ様、今あなた様は良心的な新聞各種でも時の人なんですよ。もちろんそれらは事実を理性的に書いてますがね。人気が飛躍的に高まったことは事実です。それもあって彼らのあなたとの関係性や、レフレヴィー長官との関係性を暴走した推測は、『ときめき通信』では大人気の記事なんですよ」
「サンドラさんとの関係性を暴走って……?」
「その……ぶっちゃけ夜のお相手的な」
「ないないないないない! そんなこと書かれてよく黙ってましたね?! てか、そんなの知っててよく従騎士になりたいとか言いましたね?!」
思わず立ち上がったサクラに、カイザルは「俺に怒らないでください」、と鎮火を求めるようにテーブルの上の焼き菓子を薦めて来る。
「サクラ様を見ていれば、どなたとも特別な関係にはないことくらい誰にだってわかります。少なくとも近衛騎士は誤解してませんよ。それから俺は、この顔立ちのお陰でそれほど餌食にはならないので、大した被害には遭っていません」
「実直味にあふれた顔立ちの何が気に入らないんですか」
「女性は皆『美しい』ものを手に入れたがります。美しい者同士のあれやこれを妄想するのは、楽しいのでしょう。ですから、サクラ様もそれほどお気になさらず。刺客ではないので、躱せさえすれば害にはならない連中です」
「いや、社会的立場の刺客です。十分害です」
言い切れば、カイザルはまた笑った。
サクラは木の実のタルトに似た焼き菓子を口に入れ、美味しいですよ? とカイザルにも薦める。彼も口にして、本当ですね、と二人してのほほんと茶を満喫した。イリューザーも興味はあったようだが、砂糖が入っているとわかるとにおいを嗅ぐだけ嗅いで足許に寝そべってしまう。
「どうしましょうかね。サンドラ長官がお戻りになるまでと思っておりましたが、この分だとお戻りになれるのか」
「あー……さっき受付にいたのって」




