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Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅵ

「なかなか鋭いです。遠くはないですね」

 湯気のたつ紅茶を淹れたカップをサクラの前に差し出し、カイザルも正面に座る。


「通信員、ですよ」

「通信員? なんの?」

「『乙女の友 ときめき通信』て、聞いたことないですか?」

「……はい?」


 なんだかこの世界に来て一番花畑な用語を聞いた気がして、サクラは思わず問い返す。カイザルは「ですよね」、と深い溜息をついて、通信員について説明してくれた。


「これね、五十年くらい前からある新聞なんですけど。お嬢様たちの『あの方のことがもっと知りたい』という要望が高まった結果、新聞社が出来たんです」

「え……? そういう煩悩万歳で新聞社って成り立つんですか?」


「恐ろしいことにこの五十年、成り立ってきてるんですよ……。出資者は貴族のお嬢様方がほとんどですが、平民の中にもおります。豪商なんかも噛んでますね。寄付、という形で出資させるのですが、例えば『クレイセス様のお好きな食べ物は』から服の寸法や起床時間、持っているものがどこの店のものかとか、なんか、出資者の興味を必ず記事にします、というのがうたい文句でして」

「ええー……なんですかその公然とストーカーしてプライバシーとか丸無視の業態……」


 カイザルが少し目を見開いて、「すとー……ばしー?」と首を傾げるのに、サクラはストーカーは特定の個人を異常なまでに追いかける人のことで、プライバシーは私生活上の自由であり、自分がいたところでは干渉への規制がかけられ、保護されているものだということを説明する。するとカイザルは目を丸くして、「メルティアスは実に理性的に整っているのですね」と純粋な驚きを見せた。


 彼が驚きを見せると言うことは、この世界にはそれを取り締まるための法がないということだ。サクラは騎士団で取り締まれないのかと訊けば、なかなか難しいのですと、厳つい顔が眉尻を下げ、情けなさ全開の顔で言った。

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