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Ⅷ 新しき補佐官─ⅹⅲ

「アプリーゼの一連の事情は理解しています。わたしは、暗殺者の家族を追いに来た訳じゃありません。先代のセルシアと、話がしたい、それだけです。あなたからも、それを伝えてもらえませんか。このままではエラルさん自身も危険だし、反逆者の汚名を着せられかねません。出来るなら、手を取り合えませんかと」


 サクラの言葉に、レミアスは信じがたいという表情で凝視している。

 まあ、にわかに信じろと言っても無理だろうと、サクラは立ち上がった。


「街道沿いの宿舎『ザッカニアの実』に宿泊しています。話を聞いてくださる気になったなら、おいでください」

 言えば、クレイセスが小さな手帳に何かを書き付けると破り、彼女に差し出す。

「エラル殿が私の筆跡を覚えておられるかどうかはわからないが。わかれば偽物でないことの証明にはなるだろう」


 恐る恐る彼女が受け取ったのを見て、「では」と軽く頭を下げると、サクラは市場をあとにした。


*◇*◇*◇*


 「偶然」に期待して叶った邂逅だったが、果たしてエラルに伝わるかどうかはわからない。

 サクラは開け放った窓辺に頭をもたせ、膝に顎を乗せるイリューザーの鼻筋を撫でながら、夕暮れというのに減らない人通りを眺めていた。


 なんだか、何も考えられなかった。


 サラシェリーアが亡くなってから、もうずいぶんと経つ気がする。実際にはまだ半年程度。しかしその間に、サクラは戦場に立ち、ひとつの土地を取り戻した。


「かなしい……?」

「え?」


 ぼうっとしていたサクラの頬に、小さな手がぴたりと触れた。

 気がつけば、イリューザーの頭を台に、精霊が心配そうな顔でサクラを見つめている。


「んー……どうなんだろう。自分でもよく、わかんないの。考えないといけないことはたくさんあるのに、なんだかどれも、今は考えたくなくなった、かな」

 よくわからない、というように、精霊は首を傾げた。

 音しか発さなかった精霊は、少しずつ、言葉を発するようになった。

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