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Ⅶ 積もりゆく真心─ⅹⅷ

「ははっ。団長はね、夜になって手が空いたときに、彼の剣筋の矯正なんかをしてやってたんです。彼はすでに出来上がっていましてね。暗殺者としてあまりに容赦のない動きをしてしまう。アスティーは、強さだけならもう学校に行く必要はないくらいです。騎士団の中で実戦を積ませていい段階にいる」


 それはきっとそうだろうと、サクラも思う。

 警告、でなければ、あの夜に殺されていてもおかしくなかった。


 ただ彼には、そうでない部分での教育が必要だ。学校に行くことも、己でその必要性をわかっているようだったし、そこで過ごす時間や得られる人間関係もまた、彼にとって貴重なものになるだろう。


「養成学校であんな剣筋を披露すれば、恐らく浮きます。団長は彼の資質を損なわないよう、その矯正を図っているのですよ。彼もそれを理解していて、よくついて行っています。微笑ましい師弟関係ですね」


 バララトの言葉に、じゃあ、とサクラは提案する。

「クレイセスの従騎士(ヴァルフレイア)になる、というのが、アスティーにとっては気持ちの負担にならないんじゃ?」


「いえ……アリアロス家はレア・ミネルウァきっての家柄ではありますが、貴族です。また相手も公爵なので、それでは確実に守ることは難しいかと。それにね、サクラ様。アスティーが頑張っているのは、正当な形であなたを守れるようになりたいという思いがあるからです。そこはわかってやってください」


 穏やかな表情で示される内容に、サクラは頷いた。


 風が、爽やかに吹き抜けていく。大工仕事の音や、馬の(いなな)きや、人の行き交うざわめきがそれに乗って聞こえてくるのに、サクラは目を閉じた。


 この世界に来て、多くの「心」を得たと、サクラは思う。


 それが本当に自分に向けられたもので、自分が受け止めていいものかどうか、いまだにどこかで迷うし、怯える。

 けれどそれは純粋に嬉しいことで。

 きっと自分が、渇望していたものだ。

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