Ⅶ 積もりゆく真心─ⅹⅶ
「可能ですよ。『従騎士』とは主君を守る誓いを定めた者の総称です。過去のセルシアの従騎士は、商人や医師や職人や……職業が騎士でない者も、たくさんおります」
バララトの言葉に、サクラの心は決まった。
「なら、帰ったらそうします」
「ありがとうございます。良かった。ラツィアも喜びます」
「ラッツィーが? 思ってもないのに誓いを立てさせられるのは、嫌じゃないでしょうか」
言えば、まさか、とバララトは笑った。
「ふたりとも、子供ながらサクラ様に深い感謝を覚えていますよ。ラツィアはあなたのためになる仕事に就きたいと願って、今からそれを模索しています。以前図書館に連れて行ったときに、職に関するものを一所懸命に読んでいました。お目に掛かる回数は少ないが、あの子はあなたから母のような慈愛も感じているし、だからこそ純粋にあなたを守りたいとも思っている。女官になることは『やりたいこと』かと訊かれたことは、彼女の視界を開いたようです。それだけでない多くの可能性が自分にあること、それを手にしていいことを、ラツィアは真剣に受け止めて、考えています。今は医師になりたいと……バトロネスに師事しているんですよ」
「お医者さん?」
もう決めたのかと目を見開くサクラに、バララトは慈しみに満ちた表情でもって微笑んだ。
「サクラ様が力を使わなくても済むように、そのお手伝いがしたい、と。最終的には、サクラ様の健康を守りたいということのようです」
ひとつ屋根の下で面倒を見ている分、バララトは子供たちのことを良く見ている。彼の言葉はサクラの心にすっと染み入り、ラツィアのそういった姿勢に、目頭が、胸が、熱くなった。
「アスティーもね、最終的には護衛騎士になりたいというのが目標です。今は団長のほうが気持ちの上では近いのかな」
「クレイセスと、仲いいんですか?」




