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Ⅶ 積もりゆく真心─ⅹⅲ

 次の目的地である地方院の回廊。そこに植えた幼木のところまで来れば、バララトが近くの井戸から水を汲み上げ、少し飲んでから新しく汲み上げたものを差し出してくれる。相変わらず安全確認を怠らない姿勢に、サクラは礼を言ってそれに口を付けた。


「大変ですね。実際のところ、サクラ様はどなたでお悩みなのでしょうか」

「どなたって?」

「団長と長官たち……従騎士(ヴァルフレイア)の中で」


 ぶはっと噴いて横を向いて咳き込んだのに、バララトが背中をさする。

「いやちょっと待って……」

「おや、違いましたか」

 飄々とした表情に、サクラは再びげんなりとして確かめる。


 日本で言うなら初夏のような気候の今、吹き抜けていく風が心地良い。影を作っている木の陰に入ると、ふたりは息を整えるのも含め、並んで根元に腰を降ろした。


「ひょっとしてみんな、知ってるんですか?」

「いいえ? 確認したことはありませんが……大体皆、気付いているのでは? 特に顕著なのはジェラルド長官ですね。年下だろうと何だろうと、あの方が自主的にこれほど構う相手はおりませんし。多分、そうなさることでほかを牽制なさっておいでなのでしょうけどね。それにアリアロス団長です。彼は沈着冷静で、今まで如何に分の悪い戦いでも、顔に出るということがほとんどありませんでした。若いのに大したものだと思っておりましたが、最近は盛大に溜息をおつきになることも多い。見ていると、サクラ様と衝突なのか意見のすれ違いなのか……うまく行かなかったときに、感情が前に出てしまっておられるようです。ドゥミス長官は静観なさっておいでのようですが、レフレヴィー長官は二人を牽制なさっておいでですね。さて、本命は誰だろうと」


 これにあの小僧まで加わるとなると、いよいよわかりませんねえ、と空に浮かぶ雲を追いかけながらのんびり呟く新たな従騎士(ヴァルフレイア)は、単純に面白がっているようだ。

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