Ⅶ 積もりゆく真心─ⅹⅰ
「そう。サクラに会いたければそれなりの土産がいるかなー、と思って」
バララトとアクセルが街の名を聞いて瞬時に難しい顔になったのに、「だから追い返さないでね?」とにんまり笑って見せる。
「お前そんな無茶ばっかしてると、そのうち本当に死ぬぞ。せっかくサクラ様に助けてもらったんだから、もう少し命大事にしろよ」
アクセルが忠告するのに、「わあーってるって」と軽い口調で返事をすると、デュエルはサクラに言った。
「俺役に立つよ? 騎士団とは違う筋持ってるし」
「違う筋?」
「そ。商人ていろいろ伝手持ってんの。知らない?」
「そう、聞いてますけど……」
「だから俺と、結婚しない?」
「は?」
突然出てきた単語に、サクラは面食らう。
「フィルセインの計画潰すためにも、結婚相手必要だろ? 貴族とか騎士とかから選ぶといろいろ角が立つだろうし、全然違うところから選ぶほうが丸くおさまるよ? 俺、将来性も含めて超お買い得」
「いや待って待って待って……フィルセインの計画を潰すことと、わたしが結婚しないといけないことと、関係ないですよね」
話についていけないサクラに、デュエルが怪訝な顔をする。
「セルシアの結婚は特別なんだ。聖婚ていって、それが世界の繁栄に繋がる」
「いや……それ、どっかでなんか間違って伝わってると思います……」
セルシアの結婚がそんな大層な意味を持つなら、エラルが結婚していたことで世界は繁栄しているだろうに、とサクラは唸る。それに、バララトが言った。
「事実はともかく、民がそう思っていることが重要なのですよ。フィルセインにサクラ様を渡すことなど絶対にあり得ませんが、もし万が一にもそうなってしまったなら、正しさがフィルセインにあるように見えてしまいます。ハーシェル王が偽王だと騒げば、セルシアが付いていないのだからそうかもしれないと動揺を誘うことが出来てしまう。民という大勢を味方に付けることは、反乱においては定石です」




