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Ⅶ 積もりゆく真心─ⅸ

「ええ。その頃には何度か遠征にも行っています。皆が連れ帰った子供たちを入れられる養護院はなく、近衛騎士舎で空いている部屋を使うようになりました。守るべきセルシアも、消えてしまいましたしね。……あなたが敷地内に養護院を設立するので、部屋がまた空く。そうすればあと二十名、護衛騎士を選抜します」


「今で不足は感じてないし……無理に選ばなくても良さそうですけどね。わたしも、やっとみんな顔と名前がわかって、性格も把握出来てきたところなので。ああでも……登用することは士気に繋がるし、後進の育成にも繋がる、でしたね……」

 そうです、とクレイセスは微笑んだ。


「あなたは精力的に動く。それに対フィルセイン戦を考えれば、指揮を執れる人間を育てることも急務です。セルシア騎士団は実戦を経験してきていますがそれでも、これまでの戦いでそういった者たちを失ってもいますので」


 クレイセスの言葉に、サクラは「そうですね」と、人事について承知する。

 今回の二戦に関しても、取り立てるべきを取り立て、士気に繋げたいと思っているくらいだ。今後への必要性やそれにともなう変化は、彼女の中に矛盾なく了承されることだろう。


「じゃあ、お願いします。わたしちょっと、回廊行ってきますね。サンドラさん戻ったら伝えてください」

「わかりました」


 おいでイリューザー、と呼びかけ、手紙の上にいる精霊をまた胸元に入れると、サクラは幕舎を出て行く。外にいたカイザルとツイードが、「お供します」とついて行く気配がした。


 サクラは毎日、時間を見計らって幼木を植えた場所のどこかに歌いに行く。特に多いのは地方院の回廊だ。二度目の大地震で今はもう全壊し、回廊状の瓦礫が積み重なっているだけだが、サクラは大して気にした様子もなく、瓦礫の上で歌っていた。


 クレイセスはサクラの余韻を見送ると、早く王都に戻すため、個々人、隊の評価に着手したのだった。

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