表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/218

Ⅶ 積もりゆく真心─ⅶ

(やかた)が襲撃されてからというもの、そこで人影を見た者はいないそうです。もともと人里から少し離れた森にある館でしたので、その後の行方も掴めませんでした。そこで暮らしていたのは夫婦者らしき銀髪の男女と、同じく銀髪の三歳くらいの娘、侍女らしき三十歳くらいの女だったと、ときどき出入りしていたという商人の証言が得られたに過ぎません」


 メトリオの説明に、侍女が娘を連れているのだろうかとクレイセスは子供の行方を思う。


「その子の特徴とかは、わかりますか」

「銀髪に緑の目をしていたと言います」

 恭しく答えるメトリオに、サクラは質問を重ねた。


「侍女の特徴も、わかりますか」

「年は三十くらい、金髪に茶色の目をしていたと。侍女と二人、森を散策することは多かったようです。娘は『お嬢様』と呼ばれていたので名はわかりませんでしたが、侍女はレミアスと呼ばれていたそうです。これは森で暮らす猟師から聞きました」


 レミアス、と呟き、サクラは二人に関する質問を終えた。それからはメトリオを椅子に座らせ、ルースベルヌの土地の様子や人々の暮らしぶりなどを質問し、捜査方法や苦労話に耳を傾ける。


「そう言えば、フィルセインの手の者がセルシア候補として王宮にいるという噂には、会いませんでしたか」


 ふと思い出したように問うた言葉に、メトリオは首を振った。


「その件に関しては、団長にも言い付かっておりましたので営所にも顔を出しました。ですがあくまでも噂であり、選定なされたときにあれほどの奇跡を起こせる者が、フィルセインの手の者であるはずがないと……噂そのものがすでに鎮静化傾向にあり、出所(でどころ)もつかめぬ状態でした」


「そう……でしたか」

「恐れながら、エラル様は決して浅慮(せんりょ)な方ではありません。妻女に術をかけてまでそうと信じた理由は、噂ではなく、個別に示されたなんらかのことがあったのではないかと」


「個別に?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ