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Ⅶ 積もりゆく真心─ⅴ

「王妃の件もそうですが、ユリゼラ様は単純にあなたを可愛く思っています。それが高じて、あなたならと(きさき)打診へつながったのでしょう。サクラ自身も、ユリゼラ様と手を取り合えることは望んでいたのでは?」


「それは……そうなんですけど」

「何が、引っかかっているのです?」


 クレイセスの問いに、サクラは言葉をかき集めるようにして、答えを探すようにしながら口にする。


「んー……自分が死ぬ時期を察してしまったら、心配なことに対して何か対処していこうって気持ちは、わからなくはないんです。でも、好きな人をほかの人に……年の近い同性に託すのって、本当によくわからなくて。例えば、ハーシェル王がユリゼラ様のほかに好きな人がいて、その人もハーシェル王が好きで、だからその人にお願いしたい、ならまだわかる気もするんですけど……」


 その答えに、クレイセスはサクラには恋愛の実体験はないのだなと察した。

「さて。俺が女心を語るには少々具合が悪いのですが、あなたよりは近い答えを持っているようですね」

「ユリゼラ様の気持ち、わかるんですか?」

 黒い目を目一杯大きくしたサクラに、クレイセスは若干渋い思いで答える。


「世の女性が語るところから推察するなら、そうでないからこそ託そうという気になったところはあるかと」

「え? なんで?」

「ユリゼラ様も、ハーシェルの中で不動の地位でいたい思いはあるのでしょう。ハーシェルがあなたの手を取っても、それは『仕方のないこと』だと思える。なぜならサクラは『セルシア』だから。そしてあなたなら、ハーシェルが死んだ自分を想っていても、おそらくそれを許してくれると踏んでいる」


 クレイセスの解説に、サクラが引いているのがわかった。

「やっぱ、恋愛経験、豊富なんですね」

「そう判断されると思ったから答えたくなかったんですけどね?」


 サクラの頭の中で、「豊富」と位置づける数は一体どれほどのものなのか。

 クレイセスは深く溜息をつく。


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