Ⅵ 従騎士ーⅹⅸ
「変化……しましたね」
アクセルが目を丸くして言うのに、サクラが嬉しそうに微笑んで言った。
「今くださった『忠誠』のお陰です。レア・ミネルウァもそうですが、精霊もそういう純粋なものに触れて育つみたいなので」
つまり、精霊が浄化されるような変化を起こせるほどに、純然たる忠誠が捧げられたということ。受け取る主君の思いもまた然りであろう。彼我の思いを証明してくれた精霊に、皆が自然と綻んだ。
「じゃあこの際ですからもう少し募りますか? どうせ揶揄されるなら愛人の種類も増やしましょう」
バララトが笑いながらした提案に、「それは嫌です」とサクラが半眼で拗ねた顔をするのに、カイザルが言い添える。
「でも、セルシアでなくともサクラ様にと思うヤツがほかにもいることは、お心に留めておいてください。多分俺たち、あとでそいつらに抜け駆けしたと責められます」
え? と怪訝な顔をする少女に、ツイードも言った。
「許されるなら、推薦したい者は何人かおりますよ。職に有ることでお側を離れなくてはならないなら、職を辞してあくまでも私的に護衛としてつくほうがいいのかと……あの夜、我々護衛騎士はいろいろと考えさせられました。今はまだ気が抜けない状態ですので、大きな異動はお考えではないかもしれませんが、王都に戻ったならそれも含めてお考えください。我々は、騎士団を辞したほうが護りやすくなるのでしたら、それでも構いません。そして同じように考える者は、ほかにもおります。我々が退けば、組織の『護衛騎士』として登用出来る席が出来ます。後進も育っていることを思えば、そのほうがサクラ様の身辺も警護を厚く、また組織としての長も育つかと」
ツイードの提案に、ただただ目を丸くする少女に代わり、クレイセスが「考えておこう」と答える。
「とりあえず、現状は維持だ。必要なときにはまた呼ぶ。今日はもう戻れ」
クレイセスの言葉に、四人は「御意」と頭を下げ、幕舎をあとにしたのだった。




