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Ⅵ 従騎士ーⅹⅷ

「構いませんよ。ジジイになってこんな愛らしい方の愛人になれるなど、人生何が起こるかわからないものですね。長官たちのような華々しさにはなれませんが、種類の幅広さにはなれますか。枯れ木の哀愁も是非」


 その答えに、少女の顔に諦めと敗北の色が浮かんだ。


「どう見ても、サクラの負けです」

「う……」

 自身で悟っている様子だが、言葉としてさらに突きつけるクレイセスに、サクラから足掻こうとする気配はなくなった。


 ではお手を、とバララトが言えば、観念したのか少女は小さな右手を差し出した。

「私バララト・ルクサルニーアは、恒久の忠誠をサクラ・ナナセ=レア・ミネルウァに捧げることをここに、誠心より誓います」

 再度そう言って恭しく手の甲を額に押しいただけば。


「その誓いを許します」

 サクラの言葉とともに、あの夜にはなかった反応が現れる。

 バララトの体が淡く金に包まれ、自身の額の一点が強烈な熱を持つ。戴冠式のときのそれとは明らかに違う反応に、バララトは何が変わった訳でもないが、自身の内にさらなる覚悟めいた重みが加わるのを感じていた。


 ツイード、カイザル、アクセルの順に、個々が「サクラ」への忠誠を捧げる。彼らにも同等の反応が現れたのに、皆が受け入れられたことに安堵する空気が流れた。


「ん……?」

 その間、ずっと右肩の端にへちょりと乗っていた精霊がもぞもぞと動いたのに、サクラが視線をやれば。

「んー?」

 黒い塊が背中を震わせた。


「おお?」

 サンドラが近付いて来て顔を寄せたのに、皆も肩口に注目する。


「うわあ……」

 背中を震わせていた精霊は、癒着していたのだろう、小さな羽を、ゆっくりと起こした。


 サクラがそっと掌に移し替えて目の高さに上げれば、うんうんと頑張るかのように、羽を広げる。その羽は一瞬だが、虹色に輝いた。そしてまた黒くなってしまったが、全体的に「濃灰色」になったようだ。


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