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Ⅵ 従騎士ーⅹⅶ

「サクラ様。サクラ様が従騎士(ヴァルフレイア)を定めたがらないのは、なぜなんです?」

 カイザルの疑問に、サクラは即答する。


「理解……出来ないからです」

「はい?」

「わたしの生まれた世界に、と言うか、時代に? 純然たる騎士制度はありません。この世界で主君に仕えるって意味が、護衛としての仕事をする以上の意味を持ってることはよくわかりました。でもわたしは、それを受け止めるのも重すぎるし、人生賭けて誰かを定めるとか……正直いまだに、わかんないんです」


 少し早口で答えられたそれに、サンドラが笑った。

「そういう感覚、多分ずっと埋まらないと思います」

「騎士は主君をいただいてこそ騎士、というか……主君と定められて困惑される感覚は確かに、よくわかりません……」

 カイザルこそ困惑しながらそういうのに、サクラががっくりと肩を落とす。

 感覚の違いについては孤立していることも多いのかと、四人は改めて彼女が「異世界」の住人だったことを思う。


 セルシアの護衛騎士になる連中は、個人的に騎士を望む貴族から誘いをかけられている者ばかりだ。地位も実力も上り詰めた彼らを引き抜ければ、己の名声に繋がると考えているためだが、この少女はそれを「重い」という。


「一人ひとりの人生を重く受け止めていただけてることは、よくわかっております」

 バララトの言葉に、場が仕切り直される。

「でしたら余計に、サクラ様のお側にと望みます。我々はセルシアの職にあらずとも、サクラ様を主君と仰ぎたい」


 目の前に両膝をついたままの彼女は、バララトの圧に呑まれながらも断る理由を探しているようだ。

 やがて思いついたように言う。


「し……少女趣味って言われてもいいんですか? 今まで築いてきた体面に傷がつきますよ?!」


 これに、バララトは「はっはははは!」と高らかに笑った。


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