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Ⅵ 従騎士ーⅻ

 鎮魂の儀は、複数日にわたって行われた。


 まずは、もっとも過酷な拷問が行われていた地方院。

 すべての遺体を運び出して埋葬し、夜になって鎮魂の儀を執り行えば、怒りに震えるような赤い魂が散見された。


 大地震で崩れ、回廊の形跡を残すのみのその中央に、騎士たちは持って来た幼木のひとつを植える。この地の悲しみが癒やされるような力強さで育つようにと、願いを込めて。


 そうやって、世界が痛みを覚えている場所に、サクラは皆と一緒にひとつひとつ幼木を植えていった。


 ひとつ。この地にとって、優しさであるように。

 ひとつ。人心を癒やすために、ただただ美しく咲き誇れ。

 ひとつ。苦しみを和らげるための、実りとなるように。


 そうした作業や儀式を行うすべての場において、楔であった精霊はサクラの体のどこかでじっとしていた。左右の肩に、頭の上に、胸元に、髪の中に。時折、イリューザーの鬣にも潜り込み、黒くぎょろりとした大きな目で、周囲をうかがっている。


 護衛騎士たちは、サクラのお陰で精霊が視える。主君に黒い塊が「へちょ」と張り付いている様には、正直なところ戸惑いのほうが大きかった。


 変質した精霊であるとの説明を受け、どうにか出来るとしたらやはりセルシアしかいないだろうと納得はしたものの、なんとなく、主を傷付けやしないかと警戒もしてしまう。大丈夫ですよ、と笑う主の人の良さがまた、心配だった。


 長官たちが全員本陣へと戻って来て、サクラの体調はずいぶんと落ち着いた。しかし発熱しながら儀式を行うことはそれなりに負担をともなうもののようで、夜も早い時間から眠ってしまう日々が続いている。


 十日目にしてようやく発熱もおさまり、サクラがイリューザーを連れて陣営を駆け回るようになった日の夜。

 護衛騎士四人が、主の幕舎を訪れた。


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