表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/218

Ⅳ 従騎士ーⅹ

「それを受けて、今調べさせているが……ここ二年、世界中で出生率自体が異常に落ちていることは、間違いないようだ」

「それには、原因がある、と……?」


 ハーシェルは、曖昧に頷いた。

「かもしれない、くらいしか、今は言えないが。サクラが『ニットリンデンの楔』を抜いた。その楔は、精霊を閉じ込め、変質させたものだったそうだ」


 怖いおとぎ話には、悪い精霊が出て来る。しかしその元を正せば、人が歪めてしまったゆえの話であることが多い。ユリゼラは今起きている事態が、少なからず自分にも関係しているのだろうかと、わずかに生まれた可能性を思った。


「子供のことは、それこそユリゼラが健康を取り戻してからでいい。サクラの世界では、四十を越えての出産も珍しくないそうだ。そう考えれば、俺たちにはあと二十年もある」

 穏やかにそう言うハーシェルの顔が、ぼんやりと滲んでいく。


「サクラにかこつける訳ではないが……俺は、あなたがいいんだ」

 頬を伝う前に、ハーシェルの指先が目許を拭った。

「あなたが、諦めないでくれ。体がきつければどれだけ休んでいてもいい。俺を、置いていくことだけは許さない」


 そういって抱き締められた肩越しに見える蒼天を、ユリゼラは不思議な気持ちで見上げる。


「私は……貴族に対して、なんの力も、持ち得ませんわ」

「この世界で、『王』に対して最大の影響力を持つ以外に、必要なことが?」


「子も……授からないかもしれません」

「兄の子が生きている。出来なければそちらに王統を継がせればいい」


 王妃が複数いても、子に恵まれない王はいた。その場合、血統や年齢を考慮して、臣籍降下した王族の血筋から皇太子が立てられてきたと、特に強がるでもなく、ただ当然のこととして説明するハーシェルに、肩越しに見上げる蒼天が滲んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ