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Ⅳ 従騎士ーⅶ

「ここにいると思った」

 ハーシェルが言えば、ユリゼラは静かに微笑む。しかし「これってどう書くの?」と手許の手紙を書くことに一所懸命な子供たちの質問に、ユリゼラの視線は違和感なく外された。


 ハーシェルもラグナルも、子供たちからの質問攻めに遭い、手紙を書き上げるのに付き合う。十分ほどして、見かねたセルシア騎士たちが「どうぞ、お話があっておいででしょう」と解放してくれる。


「ユリゼラ。少しいいか」

 言えば、笑顔ではあるものの、わずかに緊張を含ませた表情が頷いた。




 騎士舎を出ると、ハーシェルはユリゼラの手を取り、ゆっくりと子供たちが育てている菜園へと向かって歩き始めた。


「今回のニットリンデンの件を聞いて、ユリゼラはますますサクラが欲しくなった、か?」

 ダールガット防衛戦の圧勝から先、ユリゼラからは幾度となく、サクラを王妃にするよう打診を受けた。


「……はい。サクラは実力でもって貴族を黙らせました。このたびのことは、王妃として相応しいと、誰もが認める功績です。ハーシェル様のお側にあれば、きっと力になりましょう」


 答えれば、そう言うだろうと思っていた、と、ハーシェルは寂しげに小さく呟いた。


「サクラは、絶対に私の手を取らない」

「それはハーシェル様が拒んでおられるからでは……」

「そうじゃない。サクラは、この世界を去る日が来る」

「………………え?」


 言われたことが理解出来ず、ユリゼラは立ち止まる。


「メルティアスに……還るのですか」

「いいや。俺がサクラから聞いたのは、戴冠式の前の日だ。あのときは、サクラ自身もどのようにしてそれがなるのかわからないと言っていた。ただ、世界と約束したことは二つあり、それはこの世界にいては果たせないことなのだと」

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