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Ⅵ 従騎士ーⅵ

 セルシアが各地で起こした光響の凄まじさも、可視化された鎮魂の儀式の話も、騎士たちが心酔したセルシアの美談も、今世界の話題は、セルシアが中心だ。




「みんな、サクラから手紙よ」


 ユリゼラが書簡をたずさえて近衛騎士舎に行けば、外にいた子供たちのひとりが「あ、ユリゼラさまだ!」と声を上げた。


「あ、ホントだ、ユリゼラさまだ!」

「ユリゼラさまだ!」

「ユリゼラしゃまだ!」


 そうして子供たちが次々と声を上げながら駆け寄って来る。人為的に広がるやまびこに、ユリゼラの顔は自然とほころんだ。



 全員を集めて手紙を読んで聞かせ、字が書ける子は手紙を書いたら預かると言えば、世話係として残っている騎士に便箋をねだりに群がる。


「私も少し持って来たのよ。これも使ってちょうだい」

 言えば、女の子たちはユリゼラが持参した便箋に方向を変えた。

 端をレース状に細工したものや、淡い色が施されたもの、押し花にした花びらが漉いてあるものと、選ぶだけでもはしゃぐ声が上がるのに、ユリゼラは心が温まる思いでそれを見守る。


 邪気のない、賑やかさは好きだ。

 小さい頃は臥せってばかりいたから、年頃の子供たちと走ったりして遊んだ記憶はない。大きくなった今は、見え隠れする駆け引きめいた笑顔ばかりがひしめいて、心が疲れた。


 この子供たちも、やがてそういったことを覚えていくのだろうし、そうでなくてはならないが、今は良いことも悪いことも全部、口にも顔にも出してしまうまっすぐさが、ユリゼラには愛おしい。


 サクラが出立してからは、体調と時間の許す限り、毎日のように様子を見に来ていた。今では子供たちもだいぶ懐いてくれていて、それがまた愛おしさを膨らませる。



「あ、王様だ!」

「ホントだ、王様だ!」

「王様だ!」

「おーさま!」


 少しして現れたハーシェルも子供たちの連なる声に出迎えられ、慈愛に満ちた笑みを浮かべて食堂に入って来る。うしろに従うラグナルも、同じ歓迎を受けて柔和な表情だ。

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