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Ⅵ 従騎士ーⅴ

「大丈夫だと思うぞ」

 クレイセスの懸念するところももっともだと思うが、サンドラは笑った。


「サクラ様の慈愛は深い。完全に元通り、とは行かないかもしれないが、精霊を消してしまう結果にはしないと思う」


 クレイセスは少しだけ笑い、そうだな、と呟くように同意した。


「それにしても、街が見事に消えたな。復興には時間も手間もかかりそうだ」

「ああ。だが、ダールガットではそれほど資材を必要としなかった。ジェラルド卿の計らいでオクトランではうちからの手出しはないしな。当面は手持ちで回せるし、その間に新たな手配も出来るだろう。明日の朝、ハーシェルに書簡を送る。お前も兄上に手紙を送るなら、預かろう」

「気遣い無用だ。……あ、いや、書く!」


 王都に戻れば必ず行われることがある。なら、兄にそれを手配させなくては。ニットリンデンの復興に時間はかかるだろうが、サクラがそれに最後まで付き合うことはない。状況が落ち着けばすぐにでも凱旋となるだろう。


「明日の朝だな。わたしが書き上げるまでは待っていろ!」

「わかった」


 書くのはサクラの沐浴をして食事させ、寝かせてからだ。

 サンドラは急ぎクレイセスの幕舎をあとにした。


*◇*◇*◇*


「セルシアが、ニットリンデンを掌握した」


 ゼグリア便によってもたらされた一報に、王宮の議場は沸いた。


 ダールガット防衛戦から、およそひと月。

 セルシアが王都を離れてからは実に三月(みつき)が過ぎており、その間も暗殺に倒れた貴族が二人。各地では謎の土地枯れも発生し、貴族の間には不安が募りつつあった。


 そこにもたらされた勝利の報せは、瞬く間に王都を、世界を駆け抜けた。

 ダールガットの大勝利に続き、ニットリンデンをはじめとした旧ニアベル伯爵領の回復。フィルセインの侵攻を大きく挫いた功績に、セルシアを小娘扱いする貴族はもうほぼいない。もちろん、長官たちの功績だろうと軽視、推察する声はあったが、セルシアが策を練り、陣頭を指揮している話は、騎士たちだけでなく平民からも上がっている。

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