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Ⅵ 従騎士ーⅰ

「サクラ様!」


 夜になってようやくたどり着いた幕舎に、サンドラが勢い込んで入ってみれば。

「なんですか、それ?」

 サクラの左肩に乗っている小さな黒い塊が目に入り、怪訝な表情で顔を近付ける。


「ニットリンデンの楔、です」

「これが? 先程の大地震を起こしたのですか?!」


 翡翠を見開いてまじまじと見つめるサンドラに、軽いおびえを見せるそれを、サクラの細い人差し指が安心させるように撫でた。


「ヴィオリアは、もういいんですか?」

 ヴィオリアは、フィルセイン陣営が敷かれていた土地の名前だ。セルシア直轄領の側から、サンドラが担当して一斉攻撃に合わせて撃破した。


 昼頃になって軍の様相も落ち着いてきた頃、バララトからの急使が来て昨夜からの事の顛末が記された書簡を読み、サンドラはこれは一大事と指揮権を本来の隊長に返すと、シンと二人、こちらに走って来たのだ。


 前日の夜、額に軽い痛みは感じたが、それが意味するところはわからなかった。一時間もしないうちにおさまり、(がら)にもなく緊張していたのかと思った程度。まさか、あれがサクラの危機を知らせるものだったとは。


 急ぐ二人だが、途中、二度も大きな揺れがあり、何事かの大きな異変が起きていることも察していた。しかし、いざ本陣に着いてみればすでに皆は落ち着いていて。大事ではなかったのかと、軽く拍子抜けした。本当にサクラに何かあったのなら、陣営はもっと張り詰めているはずだ。


「ヴィオリアは一時間ほどで落としました。ご心配には及びません。それよりサクラ様。バララトによれば一度亡くなりかけたとか」

 言えば、まだ赤い顔をさらに赤くして、「あー……」と言葉にし難いように、恥ずかしげにうつむいた。


「ごめんなさい。それで戻って来てくれたんですね。今はもう大丈夫です。レア・ミネルウァが痛がる気配も、ずいぶんと落ち着いたし」

「それでもまだ、発熱なさっておいでのようです」


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