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Ⅴ ニットリンデンの楔―xxⅸ

 そんなアクセルを改めて見れば、彼が怪我をしている様子はないものの、至るところが赤黒く染まっている。今駆けて来た長靴(ちょうか)も、土埃にまみれてはいるがうっすらと赤黒い色は確認出来た。


 あの空間の至るところが血に濡れているのだと、サクラは震えを逃がすようにはあっと大きく息をつく。彼らが見てくれるなと言うそれが、どれほどむごいものなのか……アクセルの姿は、その片鱗を伝えるものだ。


「水を探しましょう。今の地震です。水源が綺麗なところがあればいいのですが」

 言って、アクセルはあたりを見回す。


 早いところ血を落とさなくは、この精霊を出してやることも出来ない。

「あ、苗木……」

 アクセルが思い出したように呟き、内砦まで戻りましょうと提案した。


「サクラ様の歌から生まれた幼木、内砦まで運び込んであります。精霊って、木から生まれるのが多いんですよね? ひょっとすると何か力になるかもしれません」

「精霊って、木から生まれるのが多いんですか?」

「木だけじゃないんですが……それから生まれるのが一番多いって、聞いた気がします」


 アクセルが自信なさげにそう答えるのに、サクラはそっと胸元を押さえる。一応、ドレスのデザイン上の問題で、繭はそこに留まっていた。


「そう言えば、リシュティーノ様を育てたユイアトさんの元も、大きな木って仰ってたかも」

 王宮の裏手に広がっている森で見たのは、じゃあ木々から生まれた精霊だったのだろうかと、遠目に見えた彼らの姿を思い出す。


 アクセルが指笛を鳴らせば、馬が一頭、駆けて来る。アクセルは「いい子だ」と鼻筋を撫でると身軽く跨がり、サクラを引っ張り上げた。



 内砦まで戻れば、そこも半分ほどが瓦解していて、守っていた隊が安全な場所へと物資を運び出している最中だった。

「サクラ様」

 皆が口々に名を呼んで駆け寄ってくるのに、アクセルが苗木の場所を問えば、すぐに「こちらです」と幌のついた荷台まで案内される。

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