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Ⅴ ニットリンデンの楔─ⅹⅳ

 なるほど、とサクラはクレイセスが指示した行動の意味を理解した。


 本来、この地に配属されていたはずのセルシア騎士たちの多くは、地下に潜っているとの報告はあった。セルシア軍が来たことを正しく知らせ、呼応させるために、どうしてもサクラの姿が必要なのだ。彼らはあぶり出されんとするため、いろいろな方法でおびき出されたとも聞く。だからこそ。


 助けに来たのだと。

 今ここにこそ、本当にセルシアがいると知らしめることが、必要だ。


 グオーン、とイリューザーが咆哮する。

「お前の声が、一番届きそうだな」

 クレイセスが笑い、進軍の歩を緩めたところで連れて来た各隊が前へと進んで行く。そして後退して来たツイードとアクセルの隊が合流した。


 街の中の外形のある建物はすべてのガラスが割れており、ひびや亀裂の入ったもの、すでに半壊しているものと、殺伐とした状況が広がっている。

 人が生活を捨てた形跡が乱雑に残されたそれらの建物から、見定めようとする視線を感じてサクラはそっと目を走らせた。


「クレイセス、わたしを降ろしてください」

「前線は目の前です。ここであなたの単独行動など許可出来ません」

「なら、一緒に来て」


 言うが早いか、サクラはクレイセスの腕をすり抜けて馬から飛び降りた。

「サクラ!」


 イリューザーを呼べば、サクラが駆けようとする先を盾になるかのように進み出す。大きく損傷した窓から建物に入ると、サクラは荒らされて雑然とした中を上へと目指して走り出した。


 甲冑を着けた騎士たちの動きはそれでも俊敏だが、いつもに比べればやはり遅い。


 クレイセスほか、護衛騎士たちが追って来るのを背後に感じつつ、サクラは上を目指した。体は痛い。たったこれだけクレイセスと距離が出来ただけで、今はレア・ミネルウァの悲痛な気配が激しく迫って来る。この土地全体が、瘴気に包まれているかのような禍々しさ。これでイリューザーまでいなかったなら、きっとまた臨死体験だ。

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